
失敗や挫折は、程度の差はありますが誰でも経験することです。しかし、似たような出来事を経験しても落ち込んだままの人もいれば、挫折を自分の成長につなげていける人もいます。
今回は失敗や挫折から成長していける人の特徴や、立ち直る力をつけるための思考法を、ポジティブ心理学の成果から紹介します。
ポジティブ心理学における成功と幸福の関係
成功するから幸せになれるのか、幸せだから成功するのか
仕事やビジネスにおける幸福度を高めたいと考える人はたくさんいます。中でも多くの人は「努力して成功すれば幸せになれる」と考えますが、仮にこの考えが正しければ、努力をして目標を達成した人はみな幸せになっているはずです。しかし、成果を出したり年収を上げて生活水準を上げたとしても、その幸福感は一時的なもので、周囲と比べて「もっと、もっと」と成功のゴールポストを前へ前へと押しやってしまいます。
ショーン・エイカー氏はポジティブ心理学と脳科学の膨大な研究から、「成功が幸せをもたらす」のではなく、「人は幸せを感じているときに頭がよく働き、パフォーマンスも高まるため成功しやすい」ということを導き出しました。
仕事やビジネスにおける幸福優位性(ハピネス・アドバンテージ)のメリット
「幸せは成功に先行する」理由について、エイカー氏は幸福感が人間のさまざまな能力を高め、また幸福感そのものが競争力の源となるからだと言い、この力のことをハピネス・アドバンテージ(幸福優位性)と呼んでいます。そして、幸福感や楽観主義は次のような効果をもたらすことが実証されています。
・モチベーションが高まる
・効率的に働ける
・挫折から立ち直る力がわく
・創造性が増す
・生産的になる
ポジティブ心理学から見る、逆境下で成長する人の特徴

どんな人にも仕事やビジネスに失敗や挫折はつきものですし、人生の中では辛い出来事で悲しみや喪失感で立ち直るのが難しい場面に遭遇することもあります。しかし、そんな経験を通して自分を成長させる人がいるのも事実です。逆境下で成長し、ハピネス・アドバンテージを高められる人の特徴を見てみましょう。
逆境下で「第三の道」を見つけられる
悲しい出来事や挫折を経験したとき、多くの人は絶望感や無力感にとらわれます。ストレスが強く、絶望的な気持ちの中では、「この状態がずっと続く」または「さらに悪いことが起こる」という2つの考え方に行きついてしまうと、状況改善のための行動に出ることはありません。結果、状況が好転することもなく、ますます絶望感や無力感を深めてしまうという悪循環に陥ってしまいます。
しかし、「失敗や挫折を見つめ、そこから立ち直り、自分を成長させる」という第三の道を見つけることができれば、悪循環から抜け出し、すばやく自分を回復させることができるようになります。
失敗や挫折、喪失の中で成長する人としない人の違いとは
災害に遭う、大病を患う、大切な人を喪失する、虐待やハラスメントを受けるといったトラウマとなるような出来事を経験をした人が立ち直って第三の道を見つけることは難しいと従来の心理学では考えられていました。しかし、ポジティブ心理学では、多くの「最悪な状態」を経験した人が「心的外傷後成長(逆境下成長」を遂げていることも示しています。
エイカー氏は逆境下で成長する人としない人の違いで一番重要なことは、辛い出来事にもポジティブな面を探す心の持ちよう、つまり「マインドセット」だと言います。
起きてしまったことは変えられませんが、マインドセットを変えていくことは可能です。
失敗や挫折を成長に変える人の思考法
では、失敗や挫折を経験したときに、具体的にどのようにマインドセットを切り替えていけばよいのでしょうか。ここでは2つ紹介します。
★リンク記事 出来事についての捉え方を変える「ABCD理論」については、「レジリエンス」の記事をご覧ください。
失敗や挫折についての「反事実」を変える
エイカー氏は、出来事を経験したときにすべての人が頭の中で、実際に起こったこととは別のストーリーを作り上げ、そのストーリーとの対比で起こったことを説明している点に注目しました。この、脳が作りあげる実際とは別の過程や結果のことを「反事実」と呼んでいます。
具体例を見てみましょう。
この出来事は幸運?不運?
エイカー氏が作成した次のストーリーを読んでみてください。
“あなたが銀行に行ったとき、強盗が入ってきて発砲し、あなたの腕に弾が命中しました。銀行には50人ほどの客がいましたが、撃たれたのはあなた一人でした。”
この出来事を他の人に話すとき、あなたなら「不運」として話しますか、それとも「幸運」として話しますか。
エイカー氏の研修では70%の人が「不運な出来事」と答えましたが、約30%が「ラッキーだった」と回答したそうです。不運と答えた人の理由は「なぜこんな場面に居合わせたのか」「撃たれて負傷したので当然不運だ」というもの。しかし、30%は「撃たれたのが腕だったので命を落とさずにすんでラッキーだった」という説明をしています。
脳が創り出すストーリー「反事実」に目を向ける
このとき脳が「銀行に行くのをやめて散歩しておけばよかった」といった別のシナリオ(反事実)を創り出せば、それに比べて現実は非常に不運なものと捉えられ、絶望感や悲嘆に嵌りやすくなります。
脳が「頭を打たれて即死していたかもしれない」「他の多くの人が撃たれていたかもしれない」というシナリオを創った場合、それに比べると「全員が生きて帰れた」ことは非常に幸運であえると捉えられ、悲嘆な気持ちから回復しやすくなります。
挫折したときの「反事実」を変えてみる
実際の事例からも、起こった出来事を「幸運」だと捉える反事実を創り出せば、回復が早くなることがわかりました。仕事や職場での失敗や挫折から早く立ち直りたい場合も、ポジティブな反事実を選ぶようにしてみましょう。
上司から任された仕事上でミスを指摘された場合、「私ではなく他の人に仕事を任せればよかったのに」というシナリオでは、どうせ自分は無能だからと捉え、そこから学んで成長することができません。しかし、「もっと重大なミスにつながる前に気づけてラッキーだった」と考えれば、気持ちもポジティブに保ちやすい上、失敗を引きずらずにすみます。
ネガティブな反事実を選びがちな人は、意識してポジティブな気持ちになれる反事実を選択するようにしてみましょう。
第三の道を考えてみる
ポジティブな反事実を意識的に選べるようになると、回復が早まる上、「第三の道」を考えることもできるようになります。
先の失敗例でポジティブな反事実を選択できたなら、さらにこれを「成長の機会である」と捉えて同じ失敗を繰り返さないための改善行動や、よりよい代替案を考えてみましょう。逆境を経験したからこそ今まで気づかなかったことに気づいたり学んだりでき、自分の成長につなげていけます。さらにそれを人と共有すれば、組織的な貢献にもつながっていくでしょう。
まとめ:
ポジティブ心理学では、従来考えられていた「努力して成功した結果、幸せになれる」という図式を覆し、「幸福感は成功に先行する」ことを実証してきました。幸福感や楽観主義は仕事やビジネスの場面でも成功や成長を促し、大きな失敗や挫折からも学んで、成長することを助けてくれます。今回は、出来事を幸運だと思える反事実(実際とは異なるストーリー)を選択することで、回復力を早める方法を紹介しました。実践を積み重ね、成長マインドセットを手に入れてください。
参考:『幸福優位 7つの法則』 ショーン・エイカー著 徳間書店